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NHKのハーバード白熱教室という番組が人気だ。
書籍「これからの『正義』の話をしよう」も、発売5日で5万部の大ヒットを記録したらしい。本講義は、ハーバード大学で歴代もっとも人気のある講座と言われているサンデル教授のJustice に関する講義を世界に公開し、書籍化したものだ。その講義の題目のみならず、教授と学生の等身大の活発な議論も、人気の秘密だとか。 では、どんな内容なのかと言うと、これが実は堅くて重い。 例えば「4人の命を救うために1人の命を奪うことは許されるか」といった質問が飛んでくる。日常あり得ない話のように思える。しかし、これが実は日常の課題に簡単に置き換えられる。この質問は例えば、「あなたの命と引き換えに、あなたの臓器をすべて他の4人に与えれば、その4人の命は助かるのです」という命題に置き換えることができる。 臓器移植は、既に身近な話だ。 この講義、実は「政治哲学」の授業である。それは倫理学の授業でもある。それは、私たちの価値観の根底を問う学問でもある。そして、価値観の根底を問うからこそ、知らず知らずのうちに私たちの精神に入り込んでくる。 実は、政治に関する意思決定の背後には、哲学らしき価値観が紛れ込んでいることが多い。 例えば子ども手当 子ども手当は子どもの福祉のために正しくつかわれるのか。 子ども手当は景気回復につながるのか。 そういった疑問が投げかけられることがある。 子ども手当は福祉政策なのか、経済政策なのか、いったいどっちなんだ?という語られ方をすることもある。しかし実はどちらも、功利主義という名の一つの価値観の枠内の議論だと言える。 次に普天間 沖縄に基地を置かなければならない理由が抑止力(deterrence)だとすれば、これは国際政治学上、Realism(現実主義) と呼ばれている学派の考え方に基づいた発想だ。しかしこれが(アメリカとの間の)国際協調主義だとすれば、これは Liberalism(自由主義) と呼ばれている学派の考え方に近いだろう。そして、沖縄から基地をなくすべき要請の根拠が、沖縄の住民の意思にあるとすれば、これは地方自治、すなわち、democracy その中でも直接民主主義の発想に近い。 このように、私たちが直面している政治的課題は、より高次な政治哲学の思想に置き換えられることが多い。 では、鳩山首相は辞めるべきであったか? 個々の課題を近視眼的に見つめれば、普天間も政治と金も、大失策だ。しかし、日米同盟は日本にとって必要不可欠である。鳩山首相は、結果的に直接民主主義よりも、現実主義あるいは国際協調主義(自由主義)を重視した。これは単なる鳩山首相の対応のまずさという問題を超えて、現実主義、自由主義、直接民主制といった、より高次の政治哲学にかかわる問題だ。私たちは、これらの思想のぶつかり合いの中で、これからの日本のあるべき姿を議論すべきと考える。そうすることで、場当たり的でない建設的で一貫した批判もできるようになる。何を実行すべきかも、明確になる。そして説明責任も果たされる。このような手法が、混迷に陥った日本の現状に光を投げかけるかもしれない。 サンデル教授なら、鳩山首相にこう言ったのではないだろうか。 「あなたは結局のところ、直接民主制よりも、現実主義(あるいは自由主義)を選択されたのですね。ご自分の地位と引き換えに」 (本記事に関するコメント、ご質問は大歓迎です!)
by shinya_fujimura
| 2010-06-02 22:32
| 多事奏論
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